Reading Journal

読書の記録や雑記など。ネタバレ含みます。

フィフティ・シェイズ・フリード

2013年4月10日発刊

著者 E.L.ジェイムズ(訳者 池田真紀子)

発行所 早川書房

 

グレイのプロポーズを受けたアナスタシア、彼らを待っていたのは愛に溢れたハネムーンや幸福な新婚生活だけではなかった。

 

シリーズ3作目、ついに完結

以前紹介しましたE.L.ジェイムズのフィフティ・シリーズの3作目であり完結編です。主人公であるアナスタシアとクリスチャンは1作目の「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」で出会い・2作目の「フィフティ・シェイズ・ダーカー」でその関係を深め結婚、ついに今作で「本当の」家族になりました。

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前2作との違い

マミーズ・ポルノとして注目を浴び性描写の過激さやプレイ内容にばかり話題の集まった1作目、そしてその特色を残し内面世界を掘り下げた2作目でしたが今作はあくまで二人の関係性や心理描写に重きを置いた作品になっていると思います。相変わらず、ド直球でハレンチな描写はありますがその比率はかなり減っている印象です。またクリスチャンのキャラクターも、彼の内面の成長に伴いかなり変わったと感じました。

そして前2作でははっきりとは明かされていなかったエレナとクリスチャンとの過去も断片的にではありますが明らかになりました。これずっと気になってたんですよ。かなりスッキリしました。

 

アナスタシアとクリスチャンの関係

今作は二人が新婚旅行に行っているシーンから始まるのですが、そこから新婚生活を通して・また問題を乗り越えることによって二人の関係がより深まっています。これは一見、アナスタシアがクリスチャンを成長させたように思えるのですが実はアナスタシア自身も成長しているような気がします。

もともと結構しっかりと自分自身を持っているキャラクターなので、はっきりここがこう変わったと言うことができないのですが…私は彼女のもつキャパシティが広がったように思いました。始めの頃はクリスチャンに振り回されて、コントロールされて、必死になって抵抗していたような感じでしたが結局最後はアナがクリスチャンをコントロールしてしまう。コントロールというと語弊があるかもしれないけれどクリスチャンのベタ惚れっぷりを鑑みると、十分そう言えるような気がします。私からしたら理想の夫婦関係だなあ。

 

結末

シリーズの最後は、アナスタシアは長男を出産・お腹には長女を妊娠中というところで終わりました。新しい家の大きな庭にある原っぱで3人(お腹の子もいれたら4人)でピクニックをしているシーンです。ここでクリスチャンはしっかり「パパ」になっていて、ああ…あのクリスチャンがねえ…なんて感慨深い気持ちになったり。きっと1作目から読んでいるとそうなりますよね。このシーンに入るまでは結構細かく描かれていただけに時間飛ぶなあという感覚もありましたが、後日談的な位置づけで良かったと思います。

また最後に収録されている幼き日のクリスチャンを描いた章と、最近発売された「グレイ」の草稿となっているクリスチャン目線でシリーズの始まりを捉えた章が秀逸でした。幼き日のクリスチャンを描いている章では彼の幼少期を思って目頭が熱くなりました。そしクリスチャン目線での章は、結末から一気に最初までタイムスリップするので彼の変人っぷりがすごく際立って感じました。これがここまで変わるんだなあって。

 

感想

1作目を読み出してから、映画も見たし続きが気になって2作目・今作と読み進めたシリーズでした。文庫本では3冊・3作品と全部で9冊もあり、ボリューム的には長編に当たりますが難しい描写が少なく会話文も多いのでかなり読みやすい作品です。また展開も早く飽きさせない作りになっているので映画やドラマを見ているように楽しめます。ただ翻訳本なので、セリフに少し違和感があったり性描写がかなりド直球で表現のバリエーションも少なかったりというところは感じました。そのあたりの抵抗がなければ楽しめる作品だと思います。

そして「過激な性描写」で話題になったシリーズですが、それだけにとどまらず登場人物たちのキャラクターや成長ぶりがとても愛おしい作品でした。本国アメリカではずっと人気があり根強いファンも多いそうですが、それも頷けます。

グレイ目線からこの物語を読み解いていく新作の「グレイ」もとても気になっています。本屋でも平積みですからね。日本人は「恥」の文化があるのでこの手の作品を愛読していても声を大にしてファンだと公言する人は少ないと思うのですが、やっぱり売れてるんですねえ。

 

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