Reading Journal

読書の記録や雑記など。ネタバレ含みます。

池袋ウェストゲートパークXII 西一番街ブラックバイト

2016年8月5日発刊
著者 石田衣良
発行所 文藝春秋

 

石田衣良の新刊、池袋ウェストゲートパークシリーズの第12作目。池袋の街を舞台にトラブルシューター マコトが活躍。

 

簡単なあらすじ紹介と印象的だったセンテンス、作中に登場した音楽、最後に私の感想を書いておきます。 

収録作品

  1. 西池第二スクールギャラリー
  2. ユーチューバー@芸術劇場
  3. 立教通り整形シンジケート
  4. 西一番街ブラックバイ

上記4作を収録。すべて初出誌は「オール讀物」で書き下ろし作品はなし。

 

 西池第二スクールギャラリー

12月の初め、西池袋の廃校になった小学校のリノベーションしたアートサポートセンターTOSHIMA内にあるギャラリー。そこに展示されている現代アート作品が壊されるという被害が発生。ギャラリーの主がマコトに事件解決を依頼。

ほとんどの大人は「終わってる」人生を生きている。

問題は終わったあとの方が、人生は長いことなのだ。 

ユーチューバー@芸術劇場

池袋を活動拠点としているトップユーチューバーからマコトに仕事の依頼。ライバル関係にあるユーチューバーに狙われているという。春のお話。

「嫌でも明日は来るからな」

音楽

ベートヴェンのピアノソナタ17番「テンペスト

ベートーヴェン ピアノソナタ2番、3番、5番 

立教通り整形シンジケート

梅雨明け直後の7月の終わり、ストーカー被害を訴える女性からの仕事の依頼。整形依存と、それを商売にする暗い世界のお話。

きれいでも、きれいでなくても、変化のなかに美しさはある。

音楽

ハチャトリアン 「組曲 仮面舞踏会」

「仮面舞踏会」の元になったのはレールモントフの戯曲で、帝政末期のロシア、賭博師が美貌の妻の不倫疑惑に嫉妬して、毒いりアイスクリームで殺害してしまうという残虐なお話。(本文より引用) 

西一番街ブラックバイ

12月池袋に突如乱立し出したOKグループの飲食店、そこはかなりのブラック企業ブラック企業で働く少年たちのお話。
表題作で単行本の帯でも取り上げられているのがこのお話です。

音楽

アレクサンドル・ボロディン作 オペラ「イーゴリ公」"韃靼人の踊り"

 

 

感想

 

池袋ウェストゲートパークとの出会い

池袋ウェストゲートパークシリーズは私にしては珍しく長年読み続けている作品です。もともとはテレビで放送されていたドラマ「池袋ウェストゲートパーク」を見て原作に興味を持ちました。当時、長瀬智也窪塚洋介たちが駆け抜ける池袋の街並みは、東京に暮らしていない私からしたらすごく都会に見えたものです。2000年に放送されていたドラマなので、もうあれから15年になるんですね。たまに懐かしくなってDVDを引っ張り出して見ています。

このドラマで原作シリーズと石田衣良に出会いました。ドラマ版とはまた違った、あまりはっちゃけていないかっこいい雰囲気が学生だった私は大好きでした。すっかり私は大人になりましたが、マコトやタカシはあまり年を取っていないようです。

今作を読んでみて

前作「憎悪のパレード」がなかなか失速気味な印象だったので今作はあまり期待せずに読みましたが、前作よりも面白かったです。取り上げられている題材も、物語もいつもながらわかりやすかったです。
しかし、少し前からAmazonのレビューでもなかなか酷評されてまして、物語が一つのテンプレートに沿って展開する形なので数を重ねると飽きが来てしまうのかもしれません。石田衣良は時節折々のいわゆる「自治ネタ」を取り入れることで常に現代的な作品を書いているのですが、まあ展開は毎度同じような感じなのです。それが酷評される原因なのかなあ。石田衣良は心ではなく頭で書く人なのではないかなあと私は思っているんですが、パターンに当てはめすぎてる節があるような気がします。

読者としての欲目

上にも書きましたが、読者である私は確実にもういくつも年を取っているのに、作品の世界も進化しており年数を重ねているのがわかるのに、なぜか主人公たちはあまり年を取っている様子がありません。
いや、初期に比べたら年齢を重ねている描写というのはちょいちょいあるんです。だけど、物語に季節感があり大体一冊の単行本で1年が巡っているような作りなので、彼らはもっと年を取っているはずなのです。しかもそうして年を重ねているのなら、もう少し生活に変化があってもいいんじゃないのかなー、なんて思ってしまうのが読者心というか。
大好きなマコトとタカシだから彼らの人生をもう少し覗いてみたいと思ってしまうのです。「キング誕生」で過去は描かれていたので、私が見たいのはきっと未来なんですけど。変わらないマコトがいて、変わらないタカシがいて、変わらないおふくろがいるのは嬉しい反面、物足りなさを感じてしまう私もいるんですよね。

 

まとめ

感想として色々ネガティブなことを書きましたが、このシリーズを読むことは私の中ですでに習慣になっているので、今後も新刊が発売されれば買うでしょうしシリーズが終わるまでは読むつもりです。マコトとタカシはもはや私の脳内の友人状態で、いろんな景色を一緒に見てきたような感覚があります。
次回作ももちろん楽しみですし、日々パワーアップしている石田衣良が次はどんな事件を仕掛けてくるのかそれにも興味があります。このブログでも、IWGPシリーズを辿り直してみたいです。